ヒカリヘ

「ねえ、愛ちゃん、日誌書き終わった?」

私の片思いの相手であり、クラスメートの美樹原愛に声をかける。

「うん、見晴ちゃん、終わったよ」

私は愛ちゃんが日誌を書いてるのをじーっと見てた。

そしてちらりと真剣に書いている愛ちゃんの顔を見たりしてたんだ。

愛ちゃんには彼女がいる。

けどこうしている時間は、私だけの愛ちゃんになってる。

もちろん、だからといって手は出せないけどね、愛ちゃんに嫌われちゃうから。

近くて遠い存在の愛ちゃん。

本当ならば私の腕の中で抱きたいよ。

しょっちゅう夢の中では、もう数え切れないほど、愛ちゃんを抱いているのだから。

悲しいけど、アダムとイヴにはなれないね・・・



・・・

何かが弾けた。

夢の中の可愛い愛ちゃんを思い出したら、ものすごくしたくなってきちゃった。

私は愛ちゃんを静かに抱き寄せた。

ピク!

愛ちゃんの体が震えた。

私はぎゅっと抱きしめた。

そして愛ちゃんにくちづけした。

「み・見晴ちゃん?」

愛ちゃんは私の顔を見た。

「愛ちゃん、抱きたい・・・今だけでいいから、今だけ私の愛ちゃんになってよ・・・」

この溢れるほどの愛を愛ちゃんに注ぎたかった。

愛ちゃんが歩んでいく歴史上に私が居ないとしても、今はどうでもいい。

今だけ私だけの愛ちゃんになってくれるのだったら。



「ねぇ、愛ちゃん、詩織ちゃんとのエッチに満足してる?」

「え・・・」

愛ちゃんは戸惑い気味だ。

そうしてるうちにどんどん顔が赤くなっていく。

「私のエッチと比べてみるのも面白いかもしれないよ」

私はそう言うと、また愛ちゃんにくちづけた。

深い深いキスを。



「ダメだよ、見晴ちゃん」

そう言われ、拒まれてしまった。

仕方がないか・・・

嫌われたくないし諦めようと思った。

けど強く抱きしめた。

「見晴ちゃん・・・ダメだって・・・」

「抱きしめるくらいいいじゃない、そのくらいはさせてよ」

「うん・・・分かった」

きっと愛ちゃんの心のなかでは詩織ちゃんの存在が大きいのだろう。

けどこうしてふたりきりでいる時くらいは、私がたくさん愛をあげるから、大丈夫だから。

愛ちゃんの未来に私が居なかったとしても、私は今を大事にしたい、そう思った。

だから愛ちゃんに今、何が、襲ってきたとしても私が全部受け止めて抱きしめてあげるから。

本来ならば、奇跡でも起きて、愛ちゃんが私の事好きになってくれたらとは思うけど、それは無理かもしれないからね。

信じたい・・・けど。



愛ちゃんの本当の気持ち。

それは詩織ちゃんに注がれているのは知ってる。

けど今だけは私だけの愛ちゃんで居て。

終りがあるのだとしたら、私が全部受け止めるよ、愛ちゃんのすべてを。

そうすれば苦しみなんてないのだから。



愛ちゃんのこと想像で抱いては、切なくなる。

いつもそばに居てくれるわけではないのだから。

愛ちゃんの相手は別にきちんといるわけなのだから。

胸が痛い。

痛いほど、愛ちゃんが好き。

もし愛ちゃんが責められることがあるのならば、私が守ってあげたい。



人って悲しみを知るために生まれてきたのかなぁ。

確かに私は愛ちゃんの気持ちをもらえなくて悲しいけど、何かが違う気がする。

愛を知りたい、愛ちゃんが私の事好きになってくれたとしたときの。

私は孤独を愛ちゃんで埋めようとしているわけじゃない、本当に愛ちゃんが好きだから今はこうして愛ちゃんを抱きしめている。

幸せはあるのかなぁ。



愛ちゃんを見てると切なくなって、胸がチクリと痛むんだ・・・

彼女の存在が愛ちゃんを強くさせてる。

私じゃ代わりになれないんだろうな・・・

だから、今こうして、愛しい人を抱きしめている瞬間を大事にしたい。

心からそう思った。



ずっと、もう時間なんか止まっちゃえばいいのに・・・

そう切に思った。

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