ぼっちクリスマス

カレンダーを捲ってみる。

もう少しで、恋人たちの日がやってくる。

街中イルミネーションで、キラキラ輝いている。

そんな中、一人で歩く。

何て虚しいんだろう。

こんな日は外に出たくないよ・・・

家でゆっくりと過ごしたいよ・・・

神様のバカ。



そんな中見つけてしまった。

私が片思いしている彼と、他の女の子と仲良く歩いている姿を。

腕なんかくんじゃってずいぶんと仲良さそうじゃない。

私は、彼に、告白もできずに、苦しんでるのに・・・

彼は私の事なんか、知りもしないのに・・・



家に着いた、やっと落ち着ける。

部屋に入った途端、私は泣いてしまった。

彼には既に恋人が居た。

私は、告白する前にふられてしまったのだ。



「見晴〜ごはんよ!」

お母さんが呼んでいるが、こんな顔で行けるわけない。

断ることにした。

「ごめん!今忙しいの!あとで食べる!」

そう言ってベッドに潜り込んだ。



プルルルル・・・

携帯電話が鳴っている。

誰だろう?

出てみることにした。

「もしもし」

「もしもし、僕だけど、伊集院だ」

伊集院君?何だろう、彼には恋人が・・・多すぎて相手にしてられないか。

「どうしたの?伊集院君」

「これから出られるかな?」

いきなりの誘いに驚いてしまった。

これって、クリスマスのデートのお誘い?

「うん・・・大丈夫だけど・・・」

「これから車で君を迎えに行くよ、待っててくれ」

そう言って、伊集院君は電話を切った。



車の音が聞こえた、伊集院君が到着した。

ピンポーン

「見晴!伊集院君が来てるわよ!」

お母さんの声がした。

下に降りて、玄関へと行った。

「こんばんは、伊集院君」

「こんばんは、見晴君」

「ちょっと出られるかな?見晴君」

どうせ暇だったので、二つ返事でOKしたの。

「いいよ」



外に出て、車に乗り込んだ。

「伊集院君は、今日のような日を一緒に過ごしてくれる女性はいないの?」

そう聞くと、伊集院君はハッとして、一瞬泣きそうな顔になった。

すぐに元のポーカーフェイスに変わったけれども。

「すべての女性が僕の相手だよ、とても今日一日で全員を相手にするのは無理だ」

まるで強がってるだけのように聞こえた。

伊集院君は誰か本気で好きな人がいる、そう確信した。

「伊集院君・・・好きな人いるでしょ?」

「え!」

伊集院君は困ったような顔をした。

「・・・いたら、どうする?」

伊集院は質問してきた。

いたら・・・か。考えたこともなかったな。

私自身、伊集院君のこと、好きとか嫌いとか考えたことなかったし。

確かに、多くの女性からはもててるけどね。

「おめでとう!って言うかな・・・多分」

伊集院君はにっこり笑って

「そうか、ありがとう」



「ところでどこいくの?これから」

伊集院君に聞いてみた。

「着けばわかるよ」

そう言って、教えてくれなかった。

車はどんどん、人の少ないところへと走っていった。

普通ならこういう場合、着いていっちゃいけないんだろうけど、相手が伊集院君だからか何故か安心してた。

けど・・・寂しいから、キスくらいはしてもらいたい気分でもあった。



「着いたよ、足元危ないから、気をつけておりるんだよ」

降りてみて、目の前を見ると、ものすごくきれいな夜景!

思わず見とれてしまった。

「きれい!伊集院君、これを私に見せたかったのね!」

「フッ、少しは、傷は癒えたかい?」

さっきまでものすごく悲しかったのに、今じゃ、もう、平気になってる。

それから、さっきから、伊集院君を男として見始めている、自分にも気がついた。

「今日は帰りたくないな・・・」

ボソッと呟いた。

このまま伊集院君にそばに居て欲しい、本気でそう思った。

「伊集院君・・・」

「なんだ・・・ん!」

私は伊集院君に無理やりくちづけた。

伊集院君は突然の出来事に、何もできずに居た。

そして言っちゃったの。

「私ね・・・今日、帰りたくない・・・伊集院君の傍にいたいよ・・・」

そう言って伊集院君の胸にうずくまった。

「見晴君、それは無理というものだ・・・」

「なんで?」

「見晴君は、幻影を見ているだけなんだから」

「僕という存在自体が、君の心に見えない、今だけの感情で自分を安売りしたら駄目だ」

そう言われると、泣いてしまった。

伊集院君の言ってることは正しい。

投げやりになってたのだ、私は。

伊集院君はそっと指で涙を拭って、抱きしめてくれた。

ふんわりと、柔らかく



伊集院君を見てると、何か思いつめた表情で夜景を見ていた。

「ね、伊集院君の好きな人の家、見えるかな?」

すると、伊集院君は指差して

「あのへんかな・・・僕の片思いの相手は」

見ると、泣きそうな顔していた。

知っちゃいけないのかもしれないと、これ以上は、口を挟まないことにした。



「伊集院君・・・私ならもう大丈夫、これ以上伊集院君のクリスマスを邪魔するのはやめておくよ、帰ろう」

そう言うと、私は車の方へと歩き出した。

伊集院君もそれに続く。



ぼっちクリスマス、同士の、慰めだったなぁ、今日は。

私はまた、彼以外に好きな人ができたら、今度は新しい彼と、今日伊集院君が連れて行ってくれた、夜景、ふたりきりで見たいな・・・



メリークリスマス!

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